第9小委員会:朝鮮通信使
設立趣意
朝鮮通信使は、江戸時代を通して、徳川将軍の交替にともない朝鮮王室から慶賀のために江戸に派遣された外交使節である。その存在は、鎖国の時代といわれた江戸時代に東アジアの間で豊かな国際関係が築かれていたことを物語っている。500人前後の朝鮮外交団に加えて、嚮導役の対馬藩士、各藩の随行員など、都合1500人が海路と街道を約10ヶ月かけて動くことから、通信使の往来は華やかなページェントを散りばめた国際イベントとなり、多大の施設やインフラの整備をともなうこととなった。そうした建築物や土木構築物の中には今日まで継続されているものも少なくなく、全体で「朝鮮通信使遺産」とでも呼べるような遺産の系を形づくっている。
事実、日韓にまたがる「道」としての共同遺産は、サンティアゴ・デ・コンポステラに連なる巡礼の道と同様に、リニアな世界遺産としての価値をもつものであり、日韓両国でその体制づくりが求められている。最初の朝鮮通信使派遣からちょうど400年を経た2007年には、日韓各地で400年行事が活発に繰り広げられ、同年7月11日に行われた国際シンポジウム「朝鮮通信使の道を日韓共同の世界遺産へ」では、日本ならびに韓国のICOMOS国内委員会においてそのための小委員会を設置して共同作業を行う旨が確認された。その体制を整えるため、本小委員会が設置された。
江戸期の日本と朝鮮を繋ぐ外交ミッション「朝鮮通信使」にまつわる文化遺産を対象とした日韓の専門家による研究プラットフォームを下敷きとして、遺産の同定ならびに活用を促進する。その活動は以下の通り。
1.朝鮮通信使ゆかりの日韓自治体ならびにNPO法人「朝鮮通信使縁地連絡協議会」と連携した朝鮮通信使遺産を介した日韓交流の促進。
2.ユネスコ世界記憶遺産に登録された朝鮮通信使関連史料と並行して、都市・建築をめぐるシリアルな文化遺産の系の構築、ならびにそのグローバルな価値評価の促進。
3.日韓の関係者、専門家を集めた研究会議や人的交流の促進。
4.その他。
委員
主査:三宅理一
委員:伊藤洋子、土屋和雄
年次活動
研究会
刊行物