第13小委員会:眺望及びセッティング
設立趣意
すでに世界遺産となっているケルンの大聖堂(登録年1996)が、その背景に計画された超高層ビル群が原因で、危機リストに載ったことがあり、この時にケルンの大聖堂の周辺状況がセッティングと表現された。セッティングはイコモス総会(2005)のシンポジウムのテーマともなったが、ケルン大聖堂の持つ価値に大きな影響を及ぼすセッティングとは、まさにランドスケープの問題である。本小委員会の活動として、東京都心からの富士山への眺望が失われる危機をパリのイコモス総会で訴えて「富士見のvista-heritage保全に配慮すべし」の決議を得たことの意義は大きい。また千葉県銚子沖の巨大風力発電施設計画に対して懸念表明を提出し、シミュレーション図を作成して地元への情報公開に協力したこと等を挙げておく。今後とも文化遺産に関する眺望及びセッティングに関することに発言していく。
委員
主査:赤坂 信
副査:松本泰生
幹事:千葉一輝
委員:川本哲也
年次活動
2022年度
洋上風力発電施設に関しては。2019年の年末に千葉県の「銚子沖風力発電施設に対する懸念表明」を日本イコモス国内委員会で提出し、銚子市に対して具体的に提言することができた。この件に関しては「景観シミュレーション図作成とその意義」と題した研究会(2021.2.13)を開催し、テーマについての会員の理解を進めてきた。一方、長崎県の世界遺産周辺に計画されている超大型の洋上風力発電施設の規模についての情報公開に関する提言案を2022年度の拡大理事会の度に協議事項として提出してきたが、この件は見送られることになった。その後も同県の世界遺産担当と関係自治体の文化財担当と連絡を取り合い、世界遺産の保全のために今後に生かしたいと考えている。
2021年度
2019年12月26日に「銚子沖洋上風力発電建設に対する懸念表明」を銚子市に提出して以来、翌年に日本イコモス国内委員会委員長、副委員長はじめ4名が現地を訪れ、視察や意見交換を実施したことがあった。この件で2021年6月7日にNHK千葉の取材を受け、赤坂が銚子市で経緯を説明した。これが首都圏ネットワークに放映され、その後「おはよう日本」で全国に報道された。後日、世界18の国と地域で放送されているBS1チャンネルの「NHKワールドニュース」でもナレーションとテロップを英語にして放送された。こうした日本イコモスの活動の一端が世界にまで報道されたことは望外の喜びだが、これを契機に、洋上の超大規模施設の出現がもたらす問題に社会的関心が高まることを期待したい。
研究会
刊行物
提言・意見書・コメント等
2021年3月26日 千葉県銚子沖に計画されている風力発電施設の景観シュミレーション図の公表について≪解説≫及び≪資料≫
2019年12月26日 銚子沖洋上風力発電施設建設に対する懸念表明