第23小委員会:ヘリテージ・エコシステム
【背景】
ヘリテージ・エコシステムは、文化遺産が有形無形の多様な要素から成り、社会において多面的な機能を持つことを想起させるために、2025年1月開催の国際シンポジウムで討議され、「ヘリテージ・エコシステムに関する群馬宣言」(以下、群馬宣言)として提唱された理念である。
この国際シンポジウムは、「富岡製糸場と絹産業遺産群」世界遺産登録10周年と、「オーセンティシティに関する奈良ドキュメント」の採択30周年を記念したものである。群馬県には多種多様な絹産業遺産が広く残り、継承の努力がなされているが、世界遺産の4つの構成資産に社会の関心が偏ることで、この全体像が見えにくくなっている。世界各地でこれと同様の課題が認識される中で、ヘリテージ・エコシステムは、オーセンティシティを社会との関係の中で捉えるというニーズとも関係している。
【活動趣旨】
エコシステムは、「ある地域に生息するすべての生物群集と、それを取り巻く環境とを包括した全体」(デジタル大辞泉、2025年5月15日閲覧)とされる。また、概して、「種」と「種の遺伝子」がそれぞれ多様性を保ち、これらを支える「環境要素」と共に複雑な循環関係を築いて、これを脅かすリスクに対する強靭性を持つと考えられている。同様に、ヘリテージ・エコシステムも、「遺産の種別」と「各遺産に関わる人々」が多様となり、これらを支える自然、社会、経済等の「環境要素」との相互補完性を発展させ、人、物、金等の適度な循環関係を築くことで、遺産が時代の変化に対応する力を高めるという考えを取るものである。
遺産は、それが作られた時代とは大きく異なる社会経済状況下に置かれている。その中で、社会との関係性が希薄となり、保護の困難を抱えているものが多く、遺産、人、環境要素の関係性を再構築する視座が不可欠である。本小委員会では、ヘリテージ・エコシステムという理念をイコモス国際憲章の流れ等の中で客観的に裏付け、この理念の具現化に資する多様なモデルを収集・分析し、方法や戦略、手段、留意点等を多様に示すことを目的とする。また、この過程で、国際的な対話を促進し、この理念の国内外における発展と定着を図ることを目的とする。
本小委員会は、「オーセンティシティに関する奈良ドキュメント」の採択から40年となる2034年までに、遺産と社会との繋がりを多角的に捉える視点を国際社会に広く根付かせ、文化遺産保護の裾野を拡大し、地域の持続的な発展に寄与することを目指している。